審美歯科

ダイレクトボンディングとコンポジットレジン(CR)の違いとは

ダイレクトボンディングと保険適用のコンポジットレジン(CR)の違いについて、いまいち分からないという方がおられるでしょう。そもそもの治療の目的や材料の質、仕上がりや適用範囲に大きな違いがあります。

ダイレクトボンディングと保険適用のCRの基本

ダイレクトボンディングとコンポジットレジンの違いで、もっとも分かりやすいものは自由診療の治療か、保険適用の治療という点です。それ以外にも詳しく特徴を挙げていきましょう。

ダイレクトボンディングの特徴

ダイレクトボンディングとは、ハイブリットセラミックという材料をお口の中で直接盛り付け、歯の欠けや隙間など形の修復をする治療法です。審美治療で使用するハイブリッドレジンを使用し、1本1本の歯に対して色や透明感、形を細かく調整でき、自然で美しい見た目に仕上げられます。歯からはがれないようエッチングという酸処理やボンディングという接着剤の塗布を分けた精密な処置ができ、ラバーダム防湿で唾液などの水分をシャットアウトして接着力を上げます。歯の色を何色も使い分けてグラデーションや艶も再現できるため、前歯のすきっ歯や形の修正、軽度の歯並びの改善など審美目的にも使えます。

メリット

  • ホワイトニング後の歯にも対応でき、見た目が非常に自然で美しい
  • 削らずに行えるケースがあるほど最小限の切削で済む
  • 1日で終わることが多く手軽な審美治療を受診したい方にはうってつけである

デメリット

  • 保険診療ではないためクリニック毎に異なり、自費診療の高額な費用がかかる
  • 1日で終わるが盛り付けることに時間はかかる

保険適用のCRの特徴

保険適用のCRとは、歯科用のベースレジンとアルミナやシリカの混ざったフィラーという粉末を主成分としたプラスチック材料です。充填器の中に材料を入れ、専用の光照射器で特殊な波長の光を当てると固まるタイプや、粉と液を混ぜ合わせると固まるタイプがあります。主に虫歯治療後の補修として行われ、色調や形の細かい調整は限定的ですが、作業時間は短く、数分から15分程度で完了します。

メリット

  • 保険適用で自己負担額が全顎ではない
  • 治療回数が少なく済む

デメリット

  • 患者さん自身の歯の色に合わせるのが難しく、吸水性があるため変色しやすい
  • 強度や見た目は劣る
  • 前歯などの審美性が問われる位置では違和感が出ることもある
項目 ダイレクトボンディング 保険CR治療
費用 自費で100%自己負担 保険適用
使用材料 色調多彩な高審美レジン 単色で基本的なレジン
見た目の自然さ 非常に自然で美しい 見た目の再現性はやや低い
色や形の調整 グラデーションや艶を細かく再現 単色で表面も最小限でやや粗め
適応範囲 審美補修・すきっ歯・小さな歯の修正など 主に虫歯の補修
耐久性・変色 比較的変色しにくく耐久性も高い 経年で変色し欠けやすい

ダイレクトボンディングで後悔する人は?

ダイレクトボンディングで後悔する人は、期待と現実のギャップに悩む人が多いです。

見た目が思ったよりも自然でなかった

ダイレクトボンディングは、見た目の美しさを重視して行う審美歯科治療ですが、治療を行う歯科医師の技術やセンスによって仕上がりが大きく左右されます。想像より不自然であったり、左右の歯と色が合っていないなどの不満が生じることがあります。特に光の当たり方や艶感、色のグラデーションなどは、ダイレクトボンディングの経験豊富な医師でなければ再現が難しく、仕上がりに後悔することがあります。

時間の経過で変色・欠けが起きた

ダイレクトボンディングに使用されるコンポジットレジンは、年月が経つにつれて変化を起こすことがあります。

  • コーヒーやワイン、カレーによる着色汚れ
  • 硬い物を噛んだ際の欠けや摩耗
  • 表面のツヤ感が失われる

長持ちすると思っていたのに2~3年で見た目が悪くなったという声もあります。

耐久性を過信していた

保険の治療に比べて高価なため、長く保てると期待されますが、平均で5〜7年程度の耐久性です。定期的なメンテナンスを受ければ10年近く保つケースもあります。

  • 歯磨きやフロスを行いセルフケアがきちんとしている
  • 歯ぎしりや食いしばりがない
  • 治療を行った歯科医師の技術がある
  • 前歯か奥歯かなど歯の位置による

歯ぎしりや食いしばりなどの癖がある人、フロスの習慣がない人は破損や脱離のリスクが高く、後悔しやすいタイプと言えます。

期待しすぎた

すきっ歯や軽度の歯並びのズレを整えるために選ばれることが多い治療ですが、見た目のみでなく根本的に歯並びも治したいと考えていた場合、時間が経ってやっぱり矯正で治療すべきだったと後悔する方もいます。矯正レベルの改善を求めていた方にとっては、ダイレクトボンディングは不向きです。見た目を整える治療であり、根本的な噛み合わせや歯列矯正には対応していません。

歯を削ることが嫌だった

ダイレクトボンディングは基本的に削らずに行える治療として紹介されることが多いですが、歯の形を整えるために少し削ることがあります。きちんと説明されていたならば納得できますが、事前に知らされていなかった場合、削らないと思っていたと後悔することがあります。

保険適用のコンポジットレジンで後悔する人は?

保険適用のコンポジットレジンで後悔する人は、審美面、耐久性、適応範囲に関する理由から後悔することが多いです。

色が周囲の歯と合わず目立ってしまう

保険のCRには基本的に単色のレジンが使われ、自然なグラデーションや艶感が再現しづらいため、前歯など目立つ部位に使うと、他の歯との違和感が生まれやすくなります。笑ったときに治療した歯だけ浮いて見えるという悩みが後から出てくるケースもあります。

変色や劣化が早く、見た目が悪くなる

保険適用のレジンは吸水性が高く、食べ物や唾液で変色しやすいという特徴があります。黄ばんできたり、黒ずんで虫歯みたいに見えるという後悔の声も多く、頻繁にやり直しが必要になる場合もあります。

欠けたり剥がれたりしやすい

保険適用のCRはプラスチックであるため、特に奥歯など力がかかる場所では破損しやすいです。噛んだときに欠けたり治療した部分が取れたというトラブルが起こりやすく、耐久性の面で不満を持つことがあります。

細かい形の調整ができない

保険診療では時間や材料に制限があるため、形や滑らかさ、細かなバランス調整は最小限になることが多く、前歯の長さや角度が少し気になる、本物の歯のような自然さがないと感じる人もいます。

希望した治療が受けられないことも

保険CRは虫歯など機能的な理由がある場合にのみ適用されるため、すきっ歯や見た目の悩みを治したかったけど、保険適用にならなかったという後悔もあります。

まとめ


見た目や自然さを重視したい方、前歯など目立つ部分をきれいに整えたい方にはダイレクトボンディングが適しています。対して、虫歯治療などの機能回復が目的でコストを抑えたくて、見た目や耐久性では限界があると知っているならば保険適用CRが適しています。ダイレクトボンディングや保険適用CRで後悔しないためには、事前に治療の目的と限界をしっかり理解すること、経験豊富な歯科医師のもとで治療を受けること、治療後も丁寧なセルフケアと定期的なチェックを続けることが重要です。どちらが最適かは、治療の目的とご予算、審美的な希望によって変わりますので、ご自身の希望を歯科医師に伝え、納得のいく治療を選びましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 京橋クローバー歯科・矯正歯科
院長 小山 泰志

松本歯科大学歯学部 卒業。奈良県立医科大学附属病院 歯科口腔外科 入局。大阪の歯科医院にて歯科医師として勤務。クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院にて勤務。

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