インプラント

インプラント周囲炎ってどんな病気?放置するとどうなるか

インプラント周囲炎ってどんな病気?

「インプラントを入れたけど、なんだか歯ぐきが腫れてる気がする」

「インプラントの周りから出血が…もしかしてトラブル?」

そんな不安を感じたことはありませんか?
実は、それは「インプラント周囲炎」という病気のサインかもしれません。

インプラント治療は見た目も噛み心地も自然で、近年多くの患者さんが選択する治療法となっています。しかしその一方で、「インプラント周囲炎」という病気の存在やリスクについては、あまり知られていないのが現状です。

このコラムでは、インプラント周囲炎とはどんな病気なのか、その原因・症状・放置したときのリスク、そして毎日のケアでどう防げるのかまで、患者さん目線でわかりやすく丁寧に解説していきます。

この記事でわかること

  1. インプラント周囲炎の正体とは?
  2. なぜ起こる?原因とリスク因子
  3. 見逃しやすい初期症状のチェックポイント
  4. 放置した場合に起こる深刻な影響
  5. 予防のためにできる日常ケアと歯科医院での対策

インプラント周囲炎とは?その正体を知っておこう

インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲に炎症が起こり、最終的には骨が溶けてしまう病気です。天然歯に起こる歯周病と似ていますが、一度発症すると進行が早く、インプラントの脱落につながることもあります。

インプラント周囲炎は、インプラント周辺の歯ぐきや骨に炎症が起こる病気です。

どうしてインプラント周囲炎が起こるのか

インプラント周囲炎は、歯垢による細菌感染が原因で起こります。インプラントには神経がないため、気づきにくいまま進行してしまうのが特徴です。

原因は主に歯垢による細菌感染で、気づかないうちに進行することもあります。

主な原因は以下の通りです:

  1. 歯磨き不足
    → インプラントは人工物なので虫歯にはなりませんが、周囲の歯ぐきは歯垢の影響を受けます。丁寧な歯磨きが必要です。
  2. 定期的な健診を受けていない
    → 歯科医院での定期的なチェックとプロのクリーニングを受けないと、早期発見が難しくなります。
  3. 喫煙や糖尿病などの全身的な要因
    → 血流が悪くなると歯ぐきの免疫力が下がり、炎症が起こりやすくなります。

これらの原因が複合的に重なることで、インプラント周囲炎のリスクが高まります。予防のためには、生活習慣の見直しも大切です。

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インプラント周囲炎の症状とは

初期はほとんど自覚症状がなく、気づいたときには進行していることも少なくありません。腫れや出血、膿、口臭などがサインになります。

歯ぐきの腫れや出血、膿、口臭などがインプラント周囲炎の症状です。

よく見られる症状:

歯ぐきが赤く腫れる
→ 炎症が起きているサインです。触ると痛みを感じることもあります。

歯磨き時に出血する
→ 健康な歯ぐきでは出血しません。出血が続く場合は要注意です。

インプラント周囲から膿が出る
→ 細菌感染が進行しているサインで、急を要する状態です。

口臭が気になる
→ 歯垢がたまり、細菌が繁殖している可能性があります。

このような症状があれば、すぐに歯科医院での診察を受けることが重要です。早期対応で、インプラントを守ることができます。

進行するとどうなる?放置のリスク

インプラント周囲炎を放置すると、炎症は歯ぐきのみにとどまらず、インプラントを支えている骨にまで進行します。骨が吸収されると、インプラントは支えを失い、最終的に脱落してしまいます。また、インプラント周囲炎は進行が早く、治療の選択肢が限られてしまうため、放置は大変危険です。

放置すると骨が失われ、インプラントが抜けてしまうリスクがあります。

インプラント周囲炎を放置した場合のリスクを段階別に見ると、次のようになります。

初期段階:軽度の炎症

症状:歯ぐきの腫れ・赤み・軽い出血

問題点:患者さん本人は違和感を感じにくく、見逃しやすい

対処:歯科医院でのクリーニングと歯磨き指導で改善可能

中等度:骨への影響が出始める

症状:歯ぐきの後退、インプラント周囲の骨の吸収開始

問題点:インプラントがわずかに動く、口臭が強くなる

対処:歯周ポケットの洗浄、抗菌療法などが必要になる

重度:骨の大部分が吸収される

症状:膿が出る、明らかな動揺、インプラントがグラグラする

問題点:骨の支えが失われ、インプラントが抜ける可能性が高まる

対処:抜去+骨造成手術(再生療法)が必要になることも

放置によるリスク:

インプラントの再治療が難しくなる
→ 骨が大きく失われると、再度インプラントを埋入するためには「骨造成(こつぞうせい)」と呼ばれる手術が必要になります。この治療は費用も時間もかかり、必ず成功するわけではありません。

他のインプラントや天然歯にも悪影響
→ 炎症が広がると、隣接するインプラントや天然歯の歯ぐきにも炎症が波及し、連鎖的に歯を失うリスクが高まります。

全身への影響が懸念されることも
→ 重度の慢性炎症が続くと、心疾患や糖尿病などの全身疾患のリスクを高める要因にもなり得ます。

インプラント周囲炎は、放置すればするほどリカバリーが難しくなります。初期のうちであれば比較的簡単な処置で治療が可能ですが、症状が進行すると高額な再手術や長期間の治療が必要となります。

また、インプラント1本の問題が、周囲の歯や口腔環境全体にまで悪影響を及ぼすため、「少し気になる」程度でも軽視せず、早めに歯科医院での健診を受けることが何より重要です。

インプラント周囲炎を防ぐためのケア方法

インプラント周囲炎は予防が何よりも大切です。正しい歯磨き、生活習慣の見直し、定期的な健診の受診でリスクを大きく減らせます。

毎日のケアと定期健診でインプラント周囲炎は予防できます。

予防のために心がけたいこと

  1. 丁寧な歯磨き
    → 特にインプラント周辺の歯ぐきをやさしく磨くことが大切です。歯間ブラシやフロスの活用もおすすめです。
  2. 抗菌性のあるマウスウォッシュの使用
    → 歯磨き後に使うことで、細菌の繁殖を抑える効果があります。
  3. 禁煙や食生活の見直し
    → 喫煙や不規則な食生活は炎症のリスクを高めます。
  4. 定期的な健診とプロフェッショナルケア
    → 3~6か月に一度は歯科医院でチェックを受けましょう。

これらの予防策を実行することで、インプラント周囲炎のリスクは大幅に低減します。特に、セルフケアとプロケアの両立が成功のカギとなります。

インプラント周囲炎に関連するQ&A

インプラント周囲炎ってどんな病気

インプラント周囲炎とは、インプラントの周囲に歯垢がたまることで歯ぐきに炎症が起き、進行すると顎の骨が溶けてインプラントが抜けてしまう恐れのある病気です。

天然歯の歯周病に似ていますが、痛みなどの自覚症状が少ないまま進行しやすいため、早期発見と毎日の丁寧なケアがとても大切です。

インプラント周囲炎は誰にでも起こるのですか?

はい、どなたにも起こる可能性があります。特に歯磨きが不十分な方や、定期的な健診を受けていない方、喫煙者や糖尿病のある方はリスクが高くなります。

インプラント周囲炎はどうすれば予防できますか?

毎日の丁寧な歯磨きと、歯間ブラシやフロスの使用が効果的です。また、3?6か月ごとの歯科健診でのチェックとクリーニングも予防には欠かせません。

インプラント周囲炎になってしまったら、どうすればいいですか?

早期であれば歯科医院でのクリーニングや抗菌処置で改善が期待できます。進行している場合は外科的治療や骨再生処置が必要になることもありますので、できるだけ早く歯科医院を受診してください。

インプラント周囲炎は自然に治ることがありますか?

いいえ、自然に治ることはありません。放置するとどんどん悪化していき、最終的にはインプラントが抜け落ちる可能性もあります。早めの対応が重要です。

まとめ

早期発見と毎日のケアが何より大切

インプラント周囲炎は、インプラント治療を成功に導くうえで避けて通れないリスクです。しかし、正しい知識と日常的なケア、そして歯科医院との連携によって、十分に予防が可能な病気でもあります。

ポイントをおさらいすると:

  1. インプラント周囲炎は、歯ぐきと骨に炎症が起こる病気
  2. 歯垢の蓄積が主な原因
  3. 初期症状がわかりにくく、進行すると骨が失われる
  4. 適切な歯磨きと定期的な健診が予防のカギ

インプラントを長く健康に保つためにも、日々のケアと早めの対処を心がけましょう。

https://www.kyobashi-clover.com/sinryo/implant.html

この記事の監修者
医療法人真摯会 京橋クローバー歯科・矯正歯科
院長 小山 泰志

松本歯科大学歯学部 卒業。奈良県立医科大学附属病院 歯科口腔外科 入局。大阪の歯科医院にて歯科医師として勤務。クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院にて勤務。

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