
歯列矯正はやめた方がいい?大人になって矯正すべきではない?と悩む方がおられます。焦って歯列矯正を行うより、じっくりと矯正治療について知ったうえで治療を行うことがベストでしょう。矯正をやめた方がいいと言われる原因、逆に治療をおすすめするケース、及び矯正治療のメリットやデメリットまで詳しくご紹介いたします。
大人の矯正はやめた方がいい?
大人になってから矯正をするのは遅いという評判や、途中でやめたくなるという情報が飛び交うと、矯正治療について不安がる人は少なくありません。ただし、大人だからという理由で矯正はやめた方がいいというのは、必ずしも正しいわけではありません。大人になってから矯正を始める人は増えており、特に40〜50代での矯正も珍しくないからです。
大人の矯正のよくある誤解
矯正は子供のうちにやる歯科治療で大人になると動かないと言われますが、大人でも歯並びは改善できます。子供に比べて痛みが強すぎて続けられないと思われがちですが、最新の矯正は痛みを軽減する工夫がされています。矯正中とわかる見た目が気になる、もしくは職業上矯正中と知られたくない方は、歯の裏側にブラケットを接着するワイヤー矯正や、半透明で目立たないマウスピース矯正という治療法もあります。時間がかかる印象のある大人の矯正は、程度にもよりますが、約1年半~3年で動的治療が完了する方もおられます。
大人の矯正をおすすめ・向かないケース
とはいえ、矯正治療は全ての人に向いているわけではありません。ご自身の歯の状態に合った選択をすることが大切です。
大人の矯正をおすすめできるケース
大人の矯正をおすすめするケースについてご紹介します。
歯並びや噛み合わせに大きく問題がある
出っ歯(上顎前突)・受け口(反対咬合)・ガタガタ(叢生)・前歯が噛めない(開咬)・噛み合わせが深い(過蓋咬合)などの歯並びのトラブル(不正咬合)をそのままにしておくと、どうしても噛み合わせが悪くなってしまいます。上下の噛み合わせが悪くなると全体の歯に均一の力がかからず、特定の歯に負担がかかる状態になり、特定の歯や、左右差による顎関節のダメージが生じます。歯列矯正で改善を行うと、顎関節症のリスク軽減のほかに、歯の負担が均一化できます。特定の歯の摩耗を予防してしっかり咀嚼を行えるため、食べ物をすりつぶすことができることから、消化器官への負担が減ることになります。
見た目のコンプレックスを解消したい
初めて会った人は、見た目のお顔立ちや、口元、歯並びが印象に残りやすいです。歯並びに自信が持てずにいると笑顔に緊張感が見られ、コンプレックスに感じたままでは精神的にもよろしくありません。歯列矯正で改善を行うと、コンプレックスの解消に繋がり、笑顔に自信が持てます。綺麗な歯並びは口元に緊張感なく笑顔になれ、清潔感や対人関係への印象がより良くなります。
将来的に歯を健康に保ちたい
歯周病や虫歯を予防するためには、歯に食べかすや歯垢(プラーク)がない状態であることが大切です。食べかすや歯垢が残りにくい歯並びとは、不正咬合の歯並びよりも、正しい歯列弓や噛み合わせの歯並びです。歯の重なりや、磨きにくい部分があると、清掃はしにくいです。歯列矯正により口腔状態を清潔に保ちやすくなり、細菌感染である虫歯や歯周病のリスクを軽減できます。
口元のバランスを整えたい
歯並びが原因と診断されている方で、口元のフェイスラインにお悩みがあるという方がおられます。歯が原因で、手術ではない方法で美しくされたい方は、矯正治療を行うことをおすすめします。ただし、骨格が原因で口元のバランスに乱れがある場合は、外科矯正になることがあります。
大人の矯正をやめた方がいいケース
反対に、大人の矯正をやめたほうがいいかもしれないケースをご紹介します。
歯周病が進行している
矯正の治療を行う前に精密検査をしますが、歯周病治療が必要な場合は先に治療してからでなければ矯正治療はできません。歯周病は日本人の8割がかかっている病気と言われ、軽度で且つ炎症が起きていなければ矯正治療を行える可能性はあります。ただし、4mm以上の歯周ポケットがあり歯垢(プラーク)や歯石が沈着している方は、無理矢理矯正治療を始めた場合、逆効果になります。治療で歯周病菌を活性化させてしまい、更に歯肉に炎症が起きたり、歯並びが悪くなるという可能性があるからです。
虫歯が多く治療が終わっていない
初期の虫歯であれば治療を開始する可能性はあります。ただし、虫歯の本数が多い方や、また中程度や重度の虫歯になっている方は、矯正治療よりも虫歯治療を優先して行います。虫歯を放置しておくと、歯を失って口腔機能を損なう為、歯並び以前の問題になるからです。
顎関節症が重度で、矯正による悪化の可能性がある
顎関節は左右の頬の耳の前にあり、下顎の骨と頭蓋骨を繋いでいる重要な関節です。食べ物の咀嚼や飲み込む動作、会話などをする際に、ゴキッという大きな音がしたり、口が指3本程大きく開けにくく痛みが出る場合は顎関節症です。顎関節症で口が開けにくく痛みが出る開口障害の方は、矯正治療よりも顎関節症の症状が治まるように対処するのが先決です。
経済的・時間的な負担が厳しく途中でやめる可能性が高い
まとまった費用が難しいという方、定期的に時間を取って通院ができないという方もあまりおすすめできません。気になる前歯のみを治療する部分矯正やセラミック矯正でも、自費治療であるため、保険治療の虫歯と比べるととても高額です。ただし、治療費用については、クリニック毎に支払い方法がいくつかあり、選択できることが多いです。歯科医院の指示どおりの通院が厳しいという方は、ドクターが歯の動きを確認出来ず、歯列矯正をおすすめできません。
やめた方がいいと言われるケースでも、事前に歯科医院と相談すれば解決できることもあるため、まずはカウンセリングを受けることが大切です。
矯正治療のメリットとデメリットを比較
矯正治療には、メリット・デメリットがあります。その両面をしっかり確認し、治療を検討しましょう。
矯正のメリット
まず大人の矯正のメリットを挙げます。
歯並びの見た目が美しくなり、自信が持てる
矯正治療で口元の美しさが整うことでコンプレックスは解消し、自分自身の外見への前向きな気持ちを持つことができ、精神的に健康でいられます。自分自身のみではなく、他者との関係においても、歯並びの整いは好印象と捉えられます。
上下の噛み合わせが改善され、噛みやすく食べやすくなる
上下の歯並びが綺麗に噛み合うと、特定の歯や筋肉に負荷がかかり過ぎず、噛みやすい状態です。顎関節症になるリスクも、不正咬合の方と比べて減らすことができます。肩凝りや偏頭痛の原因が悪い噛み合わせであるというケースもあるため、それらの不調を改善できます。
お口の中を清潔に保て、口臭のリスクが減る
前後に歯が重なっていたり、八重歯があると歯磨きでは磨き残しがちになります。歯列弓が綺麗に整うことで、ブラッシングはしやすくなり、歯垢や食べかすは減らせます。口臭の原因である歯に付着した食べかすの腐敗なども起こりにくくなります。
出っ歯や受け口などは口元のラインが変わりフェイスラインがスッキリする
出っ歯は上顎、受け口は下顎がどうしても発達しています。歯列矯正を行うことで、歯が正しい角度や位置へ変化すると、口元の突出感も減ります。それにより、横顔の審美性が高くなります。
矯正のデメリット
では、大人の矯正のデメリットを挙げます。
矯正器具装着による見た目の影響がある
治療期間中は、矯正器具を装着する必要があります。半透明な目立ちにくいマウスピース矯正や、歯の裏側に矯正器具を付ける舌側矯正ならば、見た目への影響は抑えられます。ただ、歯の表側につけるワイヤー矯正を選択された場合、矯正治療中ということが周囲の人にも分かるため、口元を見られたくないと精神的にマイナス思考になることも考えられます。
抜歯が必要となるケースがある
大人の矯正では、歯を動かすためのスペースが足りないということが考えられます。大きく移動させるならば左右の小臼歯(4番)を抜歯して、スペースを作るという処置が一般的です。それ程動かすことが無い場合は、エナメル質を削ってスペースを作るIPR(InterProximal Reduction)という処置を行います。ただし健康な歯を削ったり抜くことに抵抗感や、抜歯のリスク(体への負担)も考えられますので、必要な処置かどうかは、医師からの説明をきちんと聞く必要があります。
装着により、痛みや違和感が発生する
最近の矯正器具は痛みや違和感をなるべく減らせるようなものが開発されていますが、歯を動かすということは矯正力をかけるため、どうしても痛みが生じることが多いです。また、器具装着の締めつけ感によりそれを痛みと感じることはあります。発音についても装着した状態で発音するのに慣れず、違和感を感じることは考えられます。
歯肉退縮、歯根吸収のリスクがある
歯肉退縮、歯根吸収は矯正治療を行ううえでリスクとして挙げられます。骨は肌と同じく新陳代謝するもので、破骨細胞が骨を壊し新たな骨を作る骨芽細胞のサイクル(骨のリモデリング)です。この特徴を活かして歯を動かしていきますが、矯正力を歯にかけ過ぎると歯肉が下がる歯肉退縮、歯根が顎の骨の硬い部分に当たって歯根が短くなる歯根吸収という歯の健康にかかわるリスクが生じる可能性があります。
大人の矯正で後悔しないためのポイント
やめた方がよかったと後悔しないために、以下のポイントを押さえておきましょう。
信頼できる歯科医院を選ぶ
矯正歯科は専門的な治療です。矯正への知識は一般歯科と異なるため、症例経験豊富な歯科医師がいるクリニックを選択しましょう。矯正歯科は無料カウンセリングを設けているところも多いので、そこで歯科医師や医院に相談し、雰囲気を見てみるのも良いです。
生活スタイルに合った矯正方法を選ぶ
仕事柄どうしても矯正治療中と目立ちたくない場合、マウスピース矯正や裏側矯正を選択しましょう。治療期間を早く終わらせたいならば、前歯の気になる部分のみ治療する部分矯正にするというのも一つです。ただし、噛み合わせが悪い場合は、部分矯正ではなく全顎矯正になる確率が高いです。
継続できるよう、無理のない計画を立てる
一括払い以外に、デンタルローンや、クレジット払い、医院独自の支払い方法があります。当院では、デンタルローン、クレジット払い以外に、金利ゼロで20回分割払いなどを用意しています。費用以外の面では、クリニックの診療時間や立地なども確認し、矯正治療中の食事の注意点、歯のケア方法を事前に知っておくのも大切です。
まとめ

大人の矯正はやめた方がいい?と悩む人も多いですが、自分に合った治療法を選べば、大人でも十分に歯並びを改善できます。矯正をやめた方がいいケースもあるが、事前の対策により解決可能であることが多いです。た、矯正にはデメリットもあるが、それを上回るメリットが得られます。後悔しないために、信頼できる歯科医院で相談することが大切です。やっておけばよかったと後悔しないためにも、まずは矯正歯科を標榜している専門医院へ相談してみるのがおすすめです。