
歯医者で行うクリーニングと言われてもどのような内容か、ピンとこない方もおられるでしょう。今日は、クリーニングの内容や、メリット、どれくらいのスパンで通えばいいかなども含めてご紹介します。
歯のクリーニングとは
歯医者で行う歯のクリーニングとは、歯科医院で行う専門的な歯の清掃処置を指します。自宅での歯みがきでは落としきれない汚れや細菌のかたまり(歯垢・歯石・着色汚れなど)を、専用の器具や薬剤を使って除去し、口腔内を清潔な状態に保つことが目的です。
歯のクリーニングで取り除くものとは
歯のクリーニングで取り除く対象を挙げていきます。
歯垢(プラーク)
虫歯や歯周病の原因となる細菌の塊で、歯の表面に付着します。細菌の住処であるため粘性が高く、時間が経つと唾液の成分と結合し歯石に変わります。
歯石
何日か経過した歯垢が唾液に含まれるリンやカルシウムと結合し、石灰化した状態です。文字通り歯についた石のようになり、その部分に歯垢やバイオフィルムが付着しやすいです。ブラッシングでは取れず、歯周ポケットに沈着すると歯ぐきの炎症を引き起こします。
着色汚れ(ステイン)
コーヒーや紅茶、たばこや着色成分の強い飲食を行ったことによる歯の黄ばみや黒ずみを指します。歯の着色が見られると、歯の白さが見られないため、美しい状態とは言えません。
バイオフィルム
微生物や細菌の増殖した膜で、歯の表面にへばりついています。排水口のぬめりと同じような状態で、口腔内でバイオフィルムを放置すると歯周病の進行に関与します。
歯医者でのクリーニングによるメリット
歯科医院で行うクリーニングとは、歯科医師または歯科衛生士が専門の器具や薬剤を用いて、歯の表面や歯ぐきの周囲を徹底的に清掃する処置です。単なるお掃除ではなく、虫歯や歯周病を予防し、口腔内の健康を維持するための医療行為です。
- 虫歯や歯周病を効果的に予防
- 歯ぐきの出血や腫れの改善
- 口臭の軽減
- 歯の表面の清潔感UP
- 着色の除去で見た目が明るくなる
- 細菌感染の早期発見や早期治療につながる
- 将来的な医療費を抑えられる
虫歯や歯周病を効果的に予防
患者さんご自身の歯磨きのみでは歯垢は完全に除去できません。歯科医院のクリーニングでは、超音波スケーラーや手用器具を使って、歯と歯ぐきの間にこびりついた歯石やバイオフィルムまで徹底的に除去します。虫歯の原因菌が減少すると、歯周病の進行をストップして予防でき、将来的な歯の喪失を防げます。
歯ぐきの炎症や出血や腫れを改善
歯ぐきの赤みや腫れ、出血は、多くの場合歯石や細菌による炎症が原因です。歯科のクリーニングで原因を除去すれば、歯肉が引き締まり、健康なピンク色に戻っていきます。歯ブラシを磨くたびに出血したり、歯ぐきがムズムズするといった症状が軽減され、歯ぐきが健康な状態になれば見た目の若々しさも回復します。
口臭の軽減
慢性的な口臭の多くは、歯周病、歯垢、舌苔などにいる細菌が蛋白質を分解する際に発生する揮発性硫黄化合物というガスが原因です。クリーニングによって口腔内の細菌バランスを整えることで、口臭の原因を改善できます。
歯の表面の清潔感UP
お茶やコーヒー、たばこなどの嗜好品、カレーやチョコなど着色成分の強い飲食物による着色汚れは、通常の歯みがきではなかなか落ちません。歯科では専用の研磨ペーストや器具で磨くため、着色が除去されると患者さんの歯本来の自然な白い色が戻り、ツヤや表面のツルツル感も出ます。クリーニング後は、口の中がスッキリと爽快になり、日常の歯みがきや健康意識の向上にもつながりやすくなります。
細菌感染の早期発見や早期治療につながる
定期的にクリーニングを受けることで、歯科医師や歯科衛生士が口腔内の変化を早い段階で発見できます。初期虫歯や、歯茎の炎症、詰め物やかぶせ物の劣化、歯並びやかみ合わせの異常があれば、すぐに治療や指導ができることから、重症化を防げるという大きなメリットがあります。
将来的な医療費を抑えられる
虫歯や歯周病が進行すると、歯の神経を抜いて抜いた部分を清掃する根管治療や、義歯治療(インプラント・入れ歯・ブリッジ)など高額治療が必要になる場合があります。定期的にクリーニングに通っていれば、お口の中の細菌感染を予防でき、長期的に見て大きな医療費の節約につながるのです。
認知症の患者さんに多いのが、歯を失ったという共通項です。噛むことや、会話が億劫になると、口腔機能が低下してしまいます。咀嚼の刺激が脳に伝達しないことは認知症を進行させてしまいます。歯医者でクリーニングを定期的に行い、しっかり噛めて話せる健康な歯周組織を保つことは、認知機能の維持ににもなります。
歯医者でのクリーニングを具体的に教えて
では、歯医者でのクリーニングを具体的に挙げていきましょう。
① 口腔内チェック
歯茎の炎症や腫れ、歯石や出血の有無などを確認します。歯垢の付着状況、口臭・磨き残し・着色の有無も確認し、必要に応じて歯周病の進行度がわかる歯周ポケットを測定することもあります。
② 歯垢や歯石の除去
超音波スケーラーや手用スケーラーなどの歯科医院専用器具を使って、国家資格を持つ歯科衛生士が歯の表面や歯と歯ぐきの間の歯石を除去します。一般的なスケーリングと呼ばれる処置です。
当院ではエアフロ―を採用しています。体に害のない微粒子パウダーとジェット水流を吹き付けることで、バイオフィルムや着色汚れを除去して歯をツルツルに仕上げます。エアフロ―は歯の表面を傷つけず短時間で行え、痛みが少ないというメリットがあります。
③ 着色や汚れの除去
歯の表面を専用のブラシやラバーカップで丁寧に磨き専用の研磨剤を使って行うのがPMTCです。歯の表面を研磨してポリッシングと呼ばれる処置を行います。
④ 歯間清掃
デンタルフロスや歯間ブラシを使い、歯と歯の間の汚れを除去します。普段の歯みがきで届きにくい場所も、徹底的にきれいにします。フロッシングという処置です。
⑤ フッ素塗布
予防のためフッ素ジェルを歯の表面に塗布します。虫歯予防に一定の効果があります。医院によってオプションの場合もありますが、当院のクリーニングではフッ素塗布までを含みます。
どれくらいの間隔でクリーニングすればよい?
3〜6ヶ月に1回が目安ですが、歯周病や虫歯リスクの高い人(歯石がたまりやすい・喫煙習慣・矯正中・インプラント)であったり、糖尿病など全身疾患があるはもう少し短いサイクルをおすすめされます。毎日食後に行うオーラルケアはとても大切ですが、歯石やバイオフィルムは、歯科医院でしか落とせません。たまった汚れを定期的に除去できるのがプロのメンテナンスです。放置すると虫歯や歯周病が進行したり、口臭の原因になるため、定期的なケアで口の中の健康を維持し、将来の医療費も抑えられます。
誤解を受けがちですが、クリーニングとホワイトニングは同じ処置ではありません。クリーニングは汚れ除去、ホワイトニングは歯を薬剤で漂白する処置です。先述しましたが、クリーニングは一度やれば大丈夫ではなく、汚れは日々たまるので、定期的な通院継続が必要です。
まとめ
歯医者でのクリーニングは歯周組織の健康と予防、そして美しさを守る第一歩です。ただの歯のお掃除ではなく、病気を防ぐために健康な歯や歯肉を維持する目的があります。セルフケアでは取れない汚れや歯石、バイオフィルムを徹底除去を定期的に受け、虫歯・歯周病・口臭・見た目の悩みを総合的に予防するのが大切です。