マウスピース矯正に興味はあるけれど、失敗したら?高いお金を払って後悔したら?と不安に感じていませんか。実際に理想と違う結果になるケースはゼロではありませんし、SNSなどでそのような情報も目にします。ただし、失敗にはよくあるパターンがあり、原因と対策を知ることでリスクは減らせます。この記事では、代表的な失敗例とその対策を解説します。
目次
マウスピース矯正で失敗と感じるのはどんなとき?
マウスピース矯正で失敗と検索する人の多くは、治療そのものを否定したいというより、高い費用と長い時間をかける治療だからこそ後悔したくないという気持ちが強いはずです。実際、マウスピース矯正は正しい診断と管理、そして患者さん側の意志が高く装着時間が守れれば有効性の高い治療法です。ただ、計画や適応症例ではなかったり、自己管理のズレがあると思っていた仕上がりと違う、不具合が出たと感じることがあります。失敗の感じ方は人によって違います。
- 見た目の改善が不十分
- 噛み心地が変になった
- 途中で虫歯や歯周病が悪化
- 想定より治療が長い
- 終了後にすぐ戻った
結果のみではなく過程に起きたことやストレスも、後悔するポイントになります。
よくあるマウスピース矯正の失敗例
ここでは、マウスピース矯正で特に多い後悔や失敗パターンを整理します。代表的な失敗例として、理想の歯並びにならなかったり、噛み合わせの悪化、虫歯や歯周病、歯肉退縮や後戻り、治療期間の延長などが挙げられています。順を追って見ていきましょう。
理想の歯並びにならなかった
最も多い不満がこのタイプです。シミュレーションの通りになると思っていたのに、終わってみたら微妙にズレが残ったというケースです。マウスピース矯正とワイヤー矯正には、歯を動かす方向や量にそれぞれ得意、不得意があります。歯の回転や大きな移動、骨格に由来する問題では難易度が上がります。
| 矯正方法 | 得意な歯並びや動き | 苦手な歯並びや動き | 補足ポイント |
|---|---|---|---|
| ワイヤー矯正 | 〇 矯正力が強く幅広く対応・軽度〜重度の出っ歯・受け口・叢生・過蓋咬合〇 歯根ごとの大きな移動が可能・歯体移動が得意 | × 圧下が苦手・開咬× 奥歯を後ろへ動かす動きが苦手・非抜歯で奥歯の遠心移動が必要なケース | ・抜歯を伴い全体を大きく動かす重度症例にも対応しやすい・オールマイティに見えるが動きの得手不得手はある |
| マウスピース矯正(インビザライン) | 〇 傾斜移動が得意・歯の傾きの改善で済む軽度の出っ歯・軽度〜中程度の叢生〇 圧下が得意・開咬〇 歯槽骨上の整列が得意・すきっ歯・軽度の叢生・反対咬合〇 奥歯の遠心移動が得意・非抜歯で奥歯を後方移動したい軽度〜中程度の出っ歯・受け口 | × 歯体移動が苦手になりやすい・重度の出っ歯・重度の受け口・重度のガタガタ歯 | ・アタッチメントにより歯体移動や挺出に対応できる場合あり・奥歯の遠心移動は得意だが、ワイヤーより時間がかかる |
| 一般的なマウスピース矯正(アタッチメントなし) | ・基本は傾斜移動中心 | × 歯体移動が原則難しい× 歯を引っ張り出す挺出が難しい | ・挺出は、マウスピース単体では対応しにくい・ブランドや構造で対応範囲が変わる |
噛み合わせが悪化した
見た目がきれいに整っても噛み合わせが崩れてしまうと、どうしても不調が出てしまいます。
食事がしにくくなった
顎が疲れる
片側噛みが増える
食べることが辛くなってしまい、生活の質に直結してしまうこれらの症状は、診断、治療計画の設計や途中の微調整不足が関係することがあります。
虫歯や歯周病になった
マウスピースは取り外せる反面、装着中に唾液が歯面に行き届きません。そのため、唾液の自浄作用が下がりやすいと感じる人もいます。また、歯磨きが雑なまま装着したり、甘い飲み物を飲んですぐ装着や、マウスピース自体の洗浄不足などの習慣が重なるとどうしても細菌感染のリスクが上がります。虫歯や歯周病になったり、悪化が挙げられるのはこのためです。
歯肉退縮が起きた
歯茎が下がって歯が長く見えたり、冷たいものや熱いものがしみて知覚過敏では?などの訴えがあることがあります。これは歯の移動計画や歯周組織の状態と関係しています。過度な矯正力をかけたり、無理な動きが続くと歯周組織がダメージを受けます。歯肉退縮により歯が長くなったり、知覚過敏が起きるのはこのためです。
矯正後に後戻りした
矯正は歯を動かし終わった瞬間がゴールではありません。昔の記憶を覚えているため、歯は元の位置に戻ろうとします。歯を動かす動的治療を終えた後、リテーナーという保定装置を装着する静的治療を続けないと短期間で後戻りすることがあります。後戻りはマウスピース矯正に失敗したと感じる代表例の一つです。
治療期間が想定より長引いた
治療期間が想定より長引く原因を挙げていきましょう。装着時間の不足、途中で追加のマウスピース作製が必要になったケース、予定していなかったIPRや補助装置などの処置が必要ということが考えられます。特に装着時間は結果に直結しやすく、1日20〜22時間前後の装着が基本とされます。
失敗が起こる主な原因
失敗例を見ていくと、原因は大きく3つにまとまります。
診断や治療計画の精度不足
患者側の装着や清掃など自己管理の乱れ
そもそも適応が難しい症例を選んでしまった
マウスピース矯正は、ワイヤーと比べて患者さんの自己管理や協力度が大切で、結果が左右されやすい特性があります。つまり、同じ矯正装置であっても、誰が、どの症例に、どう管理して、どう使うかで結果が変わりやすいのです。
向きにくいケースもあるため注意しよう
マウスピース矯正には適応範囲があります。日本矯正歯科学会の情報でも、アライナー治療には推奨されにくい症例が存在することが示唆されています。一般的に注意が必要とされやすいのは、抜歯を伴う複雑なケース、成長発育の予測が難しい時期の治療、骨格性の問題が強いケースなどです。
もちろん、これは絶対に不可という意味ではありません。設備の整った医院環境で、症例経験が豊富な矯正歯科医師が慎重に計画して行うのであれば可能なケースもあるでしょう。また、学会は医療機器として認められた装置かどうかの確認や、適切な診断や管理が受けられる医療機関選びをしっかり行うことをおすすめしています。
失敗を防ぐための具体的な対策
ここからはマウスピース矯正による失敗を避けるために、今日から意識できるポイントをまとめてあげていきます。
実績のある歯科医院や医師を選ぶ
マウスピース矯正は、デジタルシミュレーションだけで完結する治療ではありません。実際には、歯の動きのクセや、顎の使い方、生活習慣、歯周組織の状態などを見ながら微調整していく臨床的な判断も重要です。カウンセリングでは、どんな症例を多く扱っているかや、追加調整などが必要か、ワイヤー併用の判断基準はどのようなものかなどを質問してみると安心材料になります。
装着時間を守る
マウスピース矯正で最も重要なポイントの一つが、装着時間を守ることです。基本的に1日20〜22時間程度の装着がおすすめされており、装着不足は計画ズレや期間延長の要因になり得ます。一日24時間しかないのに、20~22時間も装着できる自信がないという方に装着時間を確保するコツをご案内します。
- 食事時間をダラダラ伸ばさないこと
- 外したら必ずケースへ入れること
- アプリやタイマーを使用し自己管理すること
- 仕事用、外出用の歯磨きセットを常備すること
口腔内とマウスピースを清潔に保つ
虫歯や歯周病のリスクを下げるために、食後は歯磨き後装着というルーティンを習慣にしましょう。マウスピースは専用洗浄や流水ブラシでケアをして、甘い飲み物はできるだけ避け、飲むなら外すようにしてください。
違和感や痛み、噛み合わせの変化を放置しない
違和感や痛みにそのうち慣れるかなと放置すると、問題が大きくなってしまい、修正が必要になることもあります。気になる変化が出たら早めに相談して、マウスピースの再作製や補助装置の追加など、リカバリーの選択肢を早期に確保することが大切です。
リテーナーを軽視しない
矯正後の満足度を大きく左右するのが保定です。後戻りはよくある失敗例として挙げられているため、医師の指示通りに保定装置を継続することが最終的な成功の鍵になります。歯を動かした期間と同じくらいリテーナーを装着するようにしてください。
失敗かも?と思ったときの対処法
このまま続けて大丈夫なのだろうかと不安になった場合、早めに行動することで結果を変えることができます。
見た目、噛み合わせ、痛み、装着の困難さなど現状の問題点をメモ
治療計画の予定と実際のズレを歯科医師に共有
追加の検査や再計画の必要性を確認
セカンドオピニオンも選択肢に入れること
マウスピース矯正は途中で計画を立て直せる柔軟性もあります。失敗したかもと感じた時点で諦めるのではなく、原因を特定して軌道修正する発想が重要です。
まとめ

マウスピース矯正が失敗と感じる背景には、仕上がりのギャップ、噛み合わせトラブル、口腔トラブル、後戻り、期間延長など複数の要素があり、どれも珍しい悩みではありません。しかし実際は、適切な症例選択、経験のある医師の管理、装着時間と清掃の徹底、早めの相談、保定の継続などの5つを押さえることで、失敗リスクは大きく下げられます。医療機器として認められた装置での細やかな治療が受けられる医療機関の選択を推奨しています。
自分の症例はマウスピース向きか、困ったときにすぐ軌道修正できる体制か?など不安のある人ほど医院選びと自己管理を整えていきましょう。後悔のない治療に近づけるはずです。

