矯正歯科

矯正の悩みはみんな同じ?治療前に知っておきたい不安の正体と対策

矯正の悩みはみんな同じ?治療前に知っておきたい不安の正体と対策

矯正における悩みで検索すると、痛い?高い?何年かかる?目立つ?といった声がずらりと並びます。矯正はやれば終わりではなく日常生活と並走する医療行為であるゆえに、始める前に不安が出るのは自然なことです。費用が高く期間も長い矯正治療だからこそ、できる限りトラブルは避けたいところです。どんな問題が起こるのか、どう備えるか、相談で何を確認すべきかの順で整理していきましょう。

矯正がそもそも必要?という悩み

見た目は気になるけど、矯正まで必要なのかと思う方は多いです。矯正は見た目のためという印象が強いですが、噛み合わせや清掃性など歯の寿命にも関係します。歯並びや噛み合わせが乱れていると、一部の歯に負担が集中したり、汚れが残りやすくなって虫歯や歯周病リスクが上がることもあります。迷ったときは、次の3つにポイントを絞って考えましょう。

観点 チェック内容
機能面 噛みにくさがある/顎が疲れやすい/特定の歯だけすり減っている感じがある
衛生面 歯みがきがしにくい/虫歯や歯肉炎を繰り返している
心理面 写真や会話で口元を隠してしまう/人前で笑いにくいと感じる

ここで大切なのは矯正すべきか、しなくていいかをネットの情報で決めないことです。歯科医院で精密検査をすると、歯だけの問題なのか、顎などの骨格の要素が強いのかが見えてきます。

見た目が気になる装置の種類と選び方

装置が目立つのが嫌という矯正の悩みは非常に多いです。矯正装置は大きく分けると、ワイヤーブラケット矯正とマウスピース矯正があり、見た目や生活への影響が変わります。ワイヤーでも白い材料で目立ちにくくできる選択肢がある一方、マウスピースは半透明で取り外しできるのが特徴です。選ぶときのコツは見た目のみでなく、次の相性もセットで見ることです。

症例との相性

  • 動かしたい歯はどのような動きが必要か
  • 回転か、上下全部か、奥歯移動をするのかなど得意な装置を選ぶ

生活との相性

  • 会食や間食が多い生活をしているか、それとも人前で話す仕事なのかにより得意な装置を選ぶ

自己管理との相性

  • 装着時間を守れるかどうか
  • マウスピースは決められた装着時間を守れなければ治療期間が延びる為、難しければワイヤー矯正を選ぶ

目立たない矯正装置が誰でも最適になるというわけではありません。見た目のストレスを減らしつつ、ゴールに最短で近づく方法を診断ありきで選ぶのが後悔しにくくなります。

痛みや違和感が不安という悩み

矯正をためらう最大の悩みが痛そうで怖いということです。結論から言えば、痛みはゼロではないですが、強い痛みが続くというわけでもありません。装置を付けた直後や調整後に、2~3日ほど噛むと痛かったり押される感じがあり、1週間前後で慣れるケースが多いとされています。よくある不快感は主に3つです。

  • 歯が動く痛み/噛むと響き、硬いものがつらい
  • 粘膜の擦れ/ワイヤーや装置が口内の粘膜に当たり、口内炎ができる
  • 締め付け感や話しづらさ/特に矯正治療直後に出やすい

痛みへの対処法

対処の基本は刺激を減らし、炎症を落ち着かせ、無理をしないよう、食事は数日だけでもやわらかめにしましょう。例えばうどんや豆腐、煮込み料理、スープなどです。口内炎は矯正用ワックスを装置に塗り、当たる部分を弱めましょう。つらい日は、医師や薬剤師に確認のうえ鎮痛薬を検討するのも一つの方法です。

痛みが怖いからできないではなく、痛みが出るタイミングを知って備えるようにしておくと、心理的ハードルはかなり下がります。

治療期間が長そうという悩み

何年かかるについての答えは、全体矯正で、1年半~3年程度が基準とされます。ただし、矯正装置を外した後に、歯並びを安定させる保定期間が必要となります。期間が伸びやすい要因を挙げます。

  • 歯を並べるスペースが足りず、抜歯や大きな移動が必要
  • 骨格のズレが強く、外科的アプローチも視野に入る
  • 通院間隔が空きすぎた
  • 指示どおりにマウスピースを装着できない

矯正の予定を立てる時は、就職活動、成人式、結婚式、転勤などのライフイベントがあれば先に並べて、逆算でいつ開始が現実的かを決めるのがおすすめです。イベント直前に無理に動かすより、見た目を優先する時期を作るほうが、満足度が高くなります。

費用が心配という悩み

費用はもっとも現実的で切実な悩みですが、治療法や難易度、医院の料金体系も様々です。また費用は装置代のみではなく、検査、診断、調整、保定装置などが含まれるケースが多い点も押さえておきたいところです。費用の不安を軽くするのはどうすればよいのでしょうか。
調整料や保定、再作製が含まれるか総額と追加費用の有無を明確にする
分割払いやデンタルローンの有無を確認する
医療費控除の対象になり得るかどうか
安さのみで選ばずフォロー体制まで含めて比較する

医療費控除については、必要性が認められる歯列矯正は対象になり得ますが、審美目的のみだと対象にならない旨が税務当局の案内にも示されています。つまり、確定申告で困らないためにも、相談時に治療目的が機能改善であるかの説明や書類対応について確認しておくと安心です。

食事や生活への影響

矯正は生活しながら行う治療であるため、食事などにも大きな悩みになります。治療初期や調整直後は噛みにくくなることがあり、硬いものや粘着性のあるものは装置トラブルの原因になりやすいため、避けておく方が無難です。

  • せんべい、フランスパンなどの硬いもの
  • ガム、キャラメルなど粘着性のあるもの

これらは避けた方が良いですが、他にも我慢しなければならない食べ物があれば辛くなってしまいます。このような工夫をしてみましょう。

  • 食材を小さく切り煮込む
  • 外食の場合は装置に絡みにくいメニューを選ぶ

食事以外の影響

マウスピースは外して食べられる分、食後ケアをルール化しておくのも大切です。きちんと取り外し用のケースを持ち歩いて保管し、食後はすぐに歯磨きを行い、マウスピースを装着しましょう。スポーツや楽器も基本的には継続可能ですが、ラグビーやレスリングなどのコンタクトスポーツは引退後や大会後に開始、もしくはマウスガードの検討ができないか相談するのが有効です。

できなくなるという考えではなく、やり方を変えると捉えると、矯正のストレスがぐっと下がります。

虫歯や歯周病が怖い

磨きにくくて虫歯になりそうというのは矯正中の悩みの一つです。装置の周りにプラークが残りやすいのは事実なので、ここは道具と習慣で解決するのがコツです。1本の歯ブラシで全部やろうとせず、補助道具を使用しましょう。

アイテム 特徴や役割 使いどころ
タフトブラシ 毛束が1つにまとまった小回りの利くブラシ ブラケット周りなど、細かい部分を狙って磨くときに便利
歯間ブラシ/フロス 歯と歯の間の汚れを取り除く補助清掃アイテム 歯間が広い人は歯間ブラシ、狭い人はフロスで歯垢除去
フッ素配合歯みがき剤 歯質を強化して虫歯リスクを下げる 毎日の歯みがきで虫歯予防を底上げしたいときに活用
マウスピース洗浄剤 装置の汚れや菌の増殖を抑え清潔を保つ マウスピースが汚れると虫歯リスクにつながるため、日常的な洗浄が重要

加えて、定期的なチェックとプロのクリーニングを受けるのが一番効率が良いです。自覚症状が出にくい虫歯や歯周病の初期トラブルを早めに対処できます。

年齢の悩み

もう大人だし遅い?反対に子どもはいつからすべき?という年齢に関する悩みも定番です。子どもの矯正は、体の成長を利用して顎のバランスやスペース作りを狙えるのが強みで、将来的な本格矯正をする場合、抜歯処置を行わずに軽くできる可能性があります。一方、大人の矯正は顎の成長が終わっているため骨格の修正には限界があり、歯周病リスクや過去の治療歴も含めた設計が重要になりますが、大人のメリットもあります。

本人の意思で始めるため、モチベーションを保ちやすい
目立ちにくい装置など選択肢が増えている

年齢に合わせた設計が大切だという点を理解しておきましょう。

後戻りが怖い

矯正が終わった後に出てくる悩みが後戻りです。動かした歯は元の位置を覚えていて戻ろうとする力が働きます。せっかく歯並びや噛み合わせを改善しても元の位置に戻っては意味がありません。そこで活躍するのが、歯を固定するための保定装置です。

保定装置には取り外し式や固定式などあり、状態に合わせて選びます。保定期間は個人差が大きいものの、一般的に歯を動かした期間と同じくらいの期間が必要となります。歯を動かす動的治療が終わった解放感のタイミングほど、習慣を崩さないことが大切です。後戻りは保定装置をサボった分だけ起きる可能性が上がるため、未来の自分が後悔しないように、装着しましょう。

医院選びの悩み

あと、どこの医院で行うかという医院選びの悩みです。歯列矯正は長期戦となるため、技術のみではなく、通い続けられるかということも重要です。カウンセリングを受診する際には、次のチェックが役立ちます。

なぜこの装置でこの期間かという治療計画の根拠が説明される
自分の歯並びの悩みのような人を豊富に治療していて取り扱いの装置も種類がある
メリットのみではなく、リスクやデメリットも含めて話してくれる
総額や追加費用、支払い方法が明確に提示してくれる
トラブル時の対応、保定やメンテナンスのアフターフォローがある
予約の取りやすさ、通院しやすさ、院内環境など続けやすさがある

口コミなども参考にはなりますが、最終的には不安を安心に変えてくれる説明がなされるかという点で選ぶのが良いでしょう。

まとめ

矯正の悩みは放置すると不安が膨らみます。でも、悩みの中身を分解し、起きること、備えること、確認することと整理すると選択しやすくなります。悩みはゼロにならなくても、ある程度のコントロールはできます。矯正をしたいならば相談し、あなたの歯並びがどの方法で、どのくらいで改善できるのか、具体的な治療計画や見積りを聞くところからスタートしましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 京橋クローバー歯科・矯正歯科
院長 小山 泰志

松本歯科大学歯学部 卒業。奈良県立医科大学附属病院 歯科口腔外科 入局。大阪の歯科医院にて歯科医師として勤務。クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院にて勤務。

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