
虫歯の進行速度は人によって違うのか、早い人には何か特徴があるのか、気になる方も多いでしょう。口腔内の環境、生活習慣、体質などさまざまな要因が影響するためです。
虫歯の進行速度は人によって違う?
ある人は数か月で急速に進行するのに対し、別の人は何年もかけてゆっくり進むこともあります。実は虫歯の進行速度は一律ではなく、乳歯や生えたばかりの永久歯がある子供はエナメル質がやわらかいため、進行が早い傾向があります。一方、しっかり成熟した永久歯である大人は進行が比較的ゆっくりです。
虫歯の進行を早める要因
虫歯の進行速度を早めてしまう主な要因を挙げていきましょう。
歯の質や唾液の性質
エナメル質が薄い、唾液が少なく唾液緩衝能が低下している人は進行しやすいです。エナメル質が薄いのは先天性の遺伝というケースがあります。
唾液緩衝脳が低下する原因
- 加齢による唾液分泌機能の低下
- 糖尿病にかかったり、抗うつ役を服用している
- だらだら食べにより長い間口腔内が酸性に傾く
- ストレスや疲労で自律神経の乱れ
食生活の習慣
甘いものや間食が多い、酸性飲料をよく飲む人も進行しやすいです。お口の中に食べ物が入っている時間が長ければ、糖分を餌に虫歯菌が酸を排出するため口腔内が酸性となり、虫歯リスクが上がります。
口腔清掃の状態
歯磨きが不十分でプラーク(歯垢)が歯に残ると、酸が長く歯に付着するため、エナメル質が溶けやすいです。
歯並びや噛み合わせ
歯が重なっていたり、前後にガタガタしているとどうしても歯ブラシの毛先が歯にきちんと当たりません。それにより磨き残しが増えてしまい、虫歯になりやすいです。
子供や高齢者
先述した乳歯や、生え始めで歯根がきちんとできていない幼若(ようじゃく)永久歯がある子供は、エナメル質が少ないため進行が早いです。反対に、高齢者は歯ぐきが下がってエナメル質に覆われていない歯根が露出し、直接象牙質が虫歯になる根面う蝕が進みやすいです。
虫歯の進行段階と症状の変化
進行段階 | 状態 | 特徴や必要な対処 |
---|---|---|
C0・C1 | エナメル質の初期損傷 |
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C2 | 象牙質に進行 |
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C3 | 歯髄に進行 |
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C4 | 歯根まで進行 |
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虫歯の進行速度を理解するためには、どのような進行段階になるかを押さえておくことが大切です。
C0
- 歯の表面が白く濁って見える初期むし歯の状態。
- エナメル質の損傷が始まっているが、まだ進行を止められる可能性が高い。
- 痛みはなく、再石灰化で元に戻せる可能性あり。
C1
- エナメル質の表面の軽度の虫歯。
- 穴ができ始め、保護のためにフッ素塗布などの予防処置を行う。
- 歯の表面を削り、詰め物をする可能性もあり。
C2
- 象牙質に穴が開いている中度の虫歯。
- エナメル質を超えて象牙質に到達。
- 象牙質に神経細管があり、歯の神経(歯髄)と繋がるため、冷たいものや甘いものがしみやすく、痛みなど自覚症状が出やすい。
- 歯の表面を削り、被せ物をする方法。
C3
- 歯髄まで達した重度の虫歯。
- 歯髄に炎症や膿などが起き、激しい痛みがあり、夜眠れないほどの症状が出る人もいる。
- 痛みを放置すると歯髄が完全に死んでしまい、根の先の顎骨や周囲の組織にまで影響が及ぶ。
- 死んだ歯髄を抜き内側に潜む細菌や壊死組織を取り除き、清掃し消毒して充填材を詰め密閉する根管治療を行う。
麻酔を使うため痛みはほとんどなく、1回で終わる場合もありますが、症状によっては数回に分けて行うこともあります。
C4
- 歯冠部がほぼ崩壊し、歯根のみ残った重度の虫歯。
- 歯茎の腫れや痛みなどの症状が重く、顎の骨や顔の腫れなどになることがある。
- 歯を残すことはできず抜歯の処置を行う。
- 抜歯部分に義歯治療(入れ歯、ブリッジ、インプラント)が必要となる。
虫歯の進行速度が早い人の特徴
虫歯の進行速度が早い人には、いくつかの共通点があります。
唾液の量が少ないドライマウス
口呼吸でお口ぽかんと開けている癖があったり、歯並びが悪くお口を閉じにくいという方は、唾液分泌量は同じでも口腔組織が乾燥しやすいです。そのため、ドライマウス気味になります。
間食やジュースなど糖分を摂る回数が多い
虫歯の原因菌として知られるミュータンス菌は、糖質を栄養源として活動し酸を排出し、繁殖します。そのため、食事の中で糖質を摂る回数が多いと、虫歯の進行が早まるのは自然なことです。ただし、糖質は砂糖のみに含まれているわけではありません。実際には、ごはん、パン、麺類などの主食にも多く含まれているため、日常の食生活でも注意が必要です。
歯磨きが不十分
虫歯は、細菌に感染することで発症する病気です。そのため、口腔内が清潔に保たれていなければ症状は悪化しやすくなります。歯磨きの回数が不足していたり、磨き方が不十分であれば、虫歯菌が増殖しやすい環境ができあがり、結果として虫歯の進行がより進んでしまいます。歯並びが悪い場合も同様で、歯と歯の間などに汚れが付着します。
乳歯や生えたばかりの永久歯が多い子ども
乳歯のエナメル質は永久歯に比べて薄く、酸に弱いため、虫歯が短期間で進行しやすい特徴があります。わずか1週間ほどで次の段階へ進んでしまうこともあります。子どもの歯磨きは大人がしっかりサポートし、あわせて定期的な歯科検診でチェックすることが大切です。特に、おやつや食後に歯磨きをする習慣づけは、虫歯のリスクを減らす大きなポイントになります。
どうせ抜けるからと虫歯になった乳歯を放置してはいけません。乳歯を健康に保つことは、永久歯が正しく生える土台づくりにつながります。噛み合わせや発音のトラブルを防ぐ意味でも、日頃から大人が子どもの歯のケアに気を配ることで、将来の口腔の健康を守る第一歩となります。特に子どもの虫歯は進行が非常に速く、半年も放置するとC2やC3に達してしまうこともあり注意が必要です。
虫歯を放置するとどうなる?進行速度とリスク
虫歯があるけど痛くないから大丈夫と放置すると、進行速度は確実に早まります。
- C1 → C2:数か月~1年程度で進行
- C2 → C3:条件次第で数か月で進むこともある
- C3 → C4:放置で歯が崩壊し、抜歯が必要になる
虫歯が歯髄や歯根にまで及ぶと、細菌が血流に乗って全身へ影響を与えることもあります。ミュータンス菌により、感染性心内膜炎や脳卒中、IgA腎症などを引き起こすケースも報告されており、決して軽視できません。
虫歯の進行を遅らせるためにできること
進行速度を遅らせる、あるいは止めるためには日常の予防が欠かせません。
食生活の工夫
- 甘いものや間食を減らす
- ダラダラ長い時間をかけて食べない
- 食後は水やお茶で口をすすぐ
正しいブラッシング
- フッ素入り歯磨き粉を使い、食後の歯磨きを習慣化する
- 就寝前にはデンタルフロスや歯間ブラシを活用
定期的な歯科健診
- C0やC1を早期発見できれば歯を削らない治療や再石灰化を目指せる
- 3~6か月ごとの定期健診を受け、歯や歯肉が健康かどうか予防するのがおすすめ
フッ素やシーラント
- フッ素塗布で歯を強くする
- 奥歯の磨きにくい溝はシーラントで予防的に塞ぐ
まとめ
虫歯の進行速度は人によって大きく異なりますが、子どもや歯の質が弱い人は特に早く進むことが分かっています。虫歯の進行は数か月単位で一気に悪化することもあり、痛みが出た時にはすでにC2以上に進行していることが多いです。放置すると歯の崩壊だけでなく、全身の健康リスクにもつながるため、痛みがなくても早めに受診することが後悔しない最大のポイントです。定期健診と予防習慣を徹底することで、虫歯の進行速度をコントロールでき、健康な歯を長く守ることができます。